舞台オタはマイルで遠征する

Wicked観劇遠征のために陸マイラーになった舞台オタク。ウィキッドの映画をアメリカの公開初日に見たくて妄想中。

先生とあたし

浅利慶太さん死去 劇団四季創設 | NHKニュース

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

人生はすばらしいと思えるのは浅利先生と劇団四季のおかげです。

東京や大阪などの限られた大都市だけでなく各都道府県を回って公演をしてくれてありがとうございます。また広島仙台静岡で数ヶ月にわたるロングラン公演を定期的にしてくださったこと、どれだけお礼を言っても感謝しきれません。

静岡という地方都市でも長期公演があったから私は劇団四季に出会いました。学校から市民文化会館まで自転車で向かったのを今でも覚えています。もし地方公演をやらない、もしくは1週間程度の短い公演であったなら学校行事で見る機会はなかったでしょう。

地方にいながら東京と同じ文化に触れることができるのは幸せです。都会の人が思っている以上に田舎の人が新しいものに出会うまでのハードルは高いです。舞台はこじゃれたお金持ちの都会の人が行くものなんです。同じように家にテレビがあっても映るチャンネルは違います。東京で当たり前に目にする劇団四季のCMも地方では普段ありません。同じ国で会社と家を往復するだけの生活をしていても入ってくる情報量があまりにも違うんです。どちらが良いかは決められませんが広い世界があると知っているかどうかは大きな違いだと思っています。

 

東京にも海外にも興味がなかった10代の私には劇団四季との出会いは衝撃的でした。初めて見る本格的な演劇、ダンス、歌、華やかな世界。知らない事がある事を知りました。漠然とした都会への憧れが心に芽生えました。

 

静岡で平凡な人生を歩むつもりで生きてきたけど「外の世界には何かがある」と気付いてから県外に出掛けるようになりました。

 

1度の舞台で人生が変わる、というのは大げさではありません。学生時代に見たキャッツは10年経って静岡で再演されることになりました。また見たいとチケットを取ってもらったら最前列の席でした。間近で見る舞台に圧倒されてもう一度、会社の人を誘ってさらにもう一度と繰り返しました。そこで出会ったジェリーロラム役の岡村美南さんが好きになり、数ヶ月後東京公演のウィキッドに出演しているのを見に行ったらすっかり魔法にかかってしまいました。四季の会というファンクラブに入会。美南さんとウィキッドを追いかけるためにマイルを貯めて飛行機で遠征するガチオタクになりました。

 

「あなたが来てから不思議なくらい変わったの」

「生きてるんだって実感してる」

 

人生の積み重ねた選択が今であり、偶然の出会いが運命を変えてゆくんだと思います。

もし初めて見たキャッツが無ければ今の私はありません。幸せで充実した舞台オタクになれて良かった。外に出る選択肢に気づくきっかけを与えてくれたことに感謝します。

 

どんなに辛くても居場所がないと思っても劇場の椅子だけは用意された私の居場所でした。

悲しい時も怒った時も嬉しい時も「歌えば幸せ」になりました。

 

本当なら劇場で元気をもらって日常を頑張って過ごすのが良いファンだと思います。私は模範的なファンにはなれないけど、劇場に行くために頑張って生きています。あの感動をまた味わうために働きます。私が最初に手に入れたのは学校でもらった1枚のチケットだったけど、夢も愛も希望も生き甲斐も詰まったたくさんのチケットになりました。

 

みなさんのように直接お話する機会はありませんでしたが、先生の作られた劇団からは色々なものを与えていただきました。

引退され吉田社長になってから変わったこともあれば引き継がれたこともあると思います。また静岡公演があることがたいへん嬉しいです。

次に続けるためにも今週末からのオペラ座の怪人静岡公演が大成功しますように。

 

 

もう「あたし」って一人称はなくなってしまうんだなと寂しくなりました。

 

舞台の地方進出に尽力 劇団四季創設・浅利慶太さん死去|静岡新聞アットエス

 仙台や広島のホールより広い会場に、当時の関係者は「会期の後半、客席がガラガラになってしまったらどうしようという不安はあった。ふたを開けてみたら最後まで大成功だった」。約1カ月間の公演は8万人を動員し、地方都市公演に道筋をつけた。その後も県内では「キャッツ」「美女と野獣」など、専用劇場でなければ上演が難しいとされた作品が次々に登場。地方都市公演は作品を増やしながら、舞台芸術の魅力を広く伝えている。 

今でも同じじゃないかと思います。チケット発売されて2週間経っても売り切れる日はなくてほとんどが残席に余裕があるというでしたからひやひやしました。ようやく初日が完売、7月分は残りわずかとなりました。しかし9月分は空席が目立つというか半分以上空いています。このあとどれくらい売れるだろうかと心配です。それでも静岡はやめようとならずに仙台広島と同列に扱ってくれるのが嬉しいです。

ビジネスとしては都市の専用劇場だけで公演を打つほうが良いでしょう。それでも地方に来てくれる。ツアーを2番手に任せず東京公演と変わらない役者を連れてきてくれる。ありがたいです。

 

誰にとっても劇団四季が一番と言いたいわけじゃないです。選択肢がたくさんあるなら好きなものを選べばいい。でも私が住む所では選べません。今の私なら東京も名古屋も広島も北海道も行きますが学生の頃には無理だった。

だから出会えてよかったです。何かを知るチャンスを作ってくれてどうもありがとうございました。